僕は京都で生まれ、牛乳屋さんの息子として育ちました。昔から勉強はあまり得意ではないけれど、おもしろいことをするのが好きで、いつも、人を楽しませたい!驚かせたい!って思っているような子供でした。例えば、一輪車で牛乳配達チャレンジとか。両手にたくさん牛乳を持って、バランスとりながら一輪車で届けるんです(笑)。
高校ではブレイクダンスにハマってましたが、それもお客さんに反応をもらうのが楽しかったですね。あと、当時からやっぱり創作活動が好きでした。10人くらいのチームで、音や構成で自分たちを表現する作品を創ったりしていました。もともと海外の映画であるような特殊効果に興味があったので、工業高校を卒業した後は、まず映像の専門学校に2年間行って、次にプログラミング系の専門学校に行きました。これからの時代役に立つかなくらいの感じで。
プログラミングを学びながら、仕事をするなら銀行の基幹システムとかよりも、人を楽しませるものを作りたいと感じていました。ただ、当時はまだWEB関係の事業はこれから広がっていくぞという黎明期で。なので、Webも紙媒体も両方扱っているデザイン会社のようなところをイメージして就職先を探していて、行きついたのがJBAでした。オフィス見学に来た時にクリエイティブな雰囲気と、「やりたい」と言ったら挑戦させてもらえそうな空気感があって。昔から頭の中で色々と妄想することが好きだった自分の素質を活かして、新しい事ができるんじゃないかと感じました。
当時は、JBAの新入社員は2年間営業に配属されることになっていました。だから僕も営業をすることになったのですが、あまりに向いていなくって。エピソードは色々あるんですけど…例えば、ある仕事で「小林さん」という苗字のお客さまにメールを送る時に、頭の中ですっかり「小林幸子さん」ってイメージができちゃって。無意識でそのまま送っちゃって、もちろん怒られて。そういうのをちょくちょくやらかしてたら、1年で制作サイドに異動になりました(笑)
Webデザインと映像制作ですね。当時はflashを使うことが多かったのですが、学校で勉強済みだったのですぐに扱えて、楽しかったですね。仕事をしろと言われてやっているというより、自分が楽しくてやってるという感じでした。
一通りWebの仕事ができるようになった3年目頃から、海外への関心が大きくなってきました。主要なプログラミング言語は本来が英語圏のものなので、日本語の解説を追っているだけだと時間もかかるし、解決しきれないこともある。英語を学ぶことがプログラミング業務の大きな助けになると考えるようになって。それだけじゃなくて、海外で色々な人や文化に触れることは新しい発想に繋がるでしょ。今まで見たことなかったものに出会い、新しいものに触れると、自分もクリエイティブになれる気がして。自分の武器として「発想力」を掲げていたし、海外に行くのもいいなと真剣に考え始めました。
オーストラリアにワーホリに行こうと決めたときは、JBAを辞めるつもりでした。でも社長に話したら「海外にいながらうちの仕事を続けたらいいよ」って言ってくれたんです。Webの技術を学びに行くんだから会社のためにもなるし、自分も職がある状態でいけるのはありがたいので、じゃあお願いしますということで、2年間JBAの社員のままでワーホリに行くことになりました。
オーストラリアの地に降り立った瞬間「新しいスタートだ」っていう感じで、空がほんとに広く見えました。最初の1カ月は、オーストラリアの北のほうから、最終的に住む予定だった南のほうまで、友達に泊めてもらったりしながら南下しました。全てが新鮮に感じられて、ひたすらに楽しかったです。
1カ月経ってからは、9時から18時の体制で、スカイプで会議をしながらJBAの業務をこなしてました。夜は自由なので、外のコミュニティを探しに出て人と会う時間を作っていました。社長も「君は外に出て、遊びながら友達をたくさん作ってくればいいよ」って言ってくれたので。プログラミングのセミナーに学びに行く日もありました。最初は言葉が分からなかったので、とりあえず動画を撮って、帰宅してからもう一度内容を確認したりしていましたね。
当時リモートで仕事をしながらひしひしと感じたのは、直接会えないことのハードルです。スカイプ会議でも相手は見えるし聞こえるし、普通にやりとりできるだろうと思ってたんですけど、やっぱり顔をあわせて同じ空気を共有している時には当たり前に通じ合えたことが、画面越しだと、つかみきれないんですよ。それでもどかしい思いはたくさんしました。
逆に、言語の壁があっても、目の前にいるオーストラリアの人達との方がコミュニケーションがスムーズでした。個人的な体感として「その場の空気を読む」のがコミュニケーションの7割ほどを占めているんじゃないかと思います。その学びは、今も、僕が仕事のスタンスとしてお客さまとの直接のやりとりを大切にすることに繋がっています。
ちなみに、僕の妻はカナダ人なんです。結婚を決めたときから言語面での難しさはありましたが、それでも今まで一緒に過ごして来て思うのは、言葉より空気から読み取ることがいかに多いかってことですね。
帰国してからはWebチームのリーダーになって、WebディレクターとWebデザイナーを兼任してます。向こうで勉強してきた分、技術面はデザイン、プログラミングと総合的できるようになっていました。オーストラリアに行って、ちょっとした発想や着眼点の違いからアイディアが全く違う方向に広がっていくのを実際に目の当たりにしてきた経験も、仕事に生かせましたしね。好きなことを追求できる環境は楽しくて…それからもう、7年も経つんですね…そんな実感なかったですけど。
2020年に入ってからの比較的最近の案件なのですが、社員3万名規模のあるグローバルメーカーA社さまとのお仕事が面白かったですね。JBAの様々な業務のなかで、社内コミュニケーションを活発化させるための社内マガジンのような媒体「社内報」の制作がありますが、私たちWebチームも「Web社内報」というのを作っています。会社の経営方針や、新商品発売といった最近の社内ニュースなどを社員に伝えていくWebサイトです。A社さまのご相談は、中期経営計画(以下、中計)を社員に浸透させるには内容が難しい、理解してもらいやすくするための何かいい企画はないだろうかというものでした。中計とは、会社の3年後のビジョン実現にむけて取り組むべきことをまとめた計画書のことです。これを社員一人一人が理解して仕事に向き合わないとビジョンの達成ができません。
難しい経営計画をちゃんと見てもらえるようにするためには…と考えていたところ、お客さまの外部向けサイト内にあった企画が目に留まりました。それをヒントにモンスターが出す中計クイズを解きすすめていく、PRGゲームのような企画を提案させていただいて。誰でもとっつきやく、初めて見る人でも中計の理解が深まるような仕組みを作ろうと、制作がスタートしました。
A社さまの社員の方々がこの企画に興味を持てるように、Webチーム内で様々なアイデアを出し合ったのも印象深いです。特に同世代が多かったので、こういうモンスターにしたらいいんじゃないか、こんな見せ方にしたらいいんじゃないか、っていろんな意見を言い合って。非常に楽しみながら制作できたと思います。デザインは全てドット絵にしてイラストレーターさんに起こしてもらったりもしました。この企画の狙いとして、1度やった後も何回もやりたくなるゲームを目指していたので、次のモンスター見たくなるようにシルエットを登場させたり、クイズの正解数に応じて点数を入れたり、細かいところまでこだわってみんなで話し合いました。
僕の思いとしては、B社さまのWeb社内報は比較的固めの企画が多いなかで、この企画で社員同士のコミュニケーション設計もできればいいなというもありました。なので、「最後にモンスターどこまでいけた?」とか「君は何点だった?」とか会話してくれたらな、と納品後のことを想像しながら作っていましたね。経営計画を理解してもらうのはもちろん、さらにプラスの効果というか。自分たちの作るゲームで遊んでくださる社員の方々の気持ちを考えながら進めていけたと思います。
ここがJBAならではの良いところだと思うんですけど、制作サイドのメンバーもお客さまと直接やりとりできる機会があるんです。僕にとって、現場の空気感を見ることは大切なことです。そこでお客さまご自身が気づいていない部分にまで踏み込んで、新しい発想で手助けできた時が一番楽しいですね。そしたら、社内サイトだけじゃなくて今度はコーポレートサイトも任せていただいたり、信頼関係を深めることで次々に依頼が広がっていくことも実際に多くて、やりがいにもつながります。
先ほどのA社さまのお話がまさにそうですけど、こちらのちょっとした思い付きから作ったもので、すごく喜んでいただける。そんな風に、今ある問題と技術を結びつけ解決案を出すというのもクリエティブの大切な部分だと思います。さらに自分の作りたいものが形にできて成果も出て、お客さまの役に立てるってすごく嬉しいですよね。ここまでトータルで想像できるクリエイティブディレクターになってきたいです。これからもお客さまとやりとりするなかで問題を見つけ出して、その解決の為に経験を集結させ、自らの知恵と勘を研ぎ澄まして提案に活かしていきたいと思います。
また最近は、人の動きを画像解析してそれに合わせて動くドローンのシステムを作ってみました。これをJBAとしてどう使っていけるかはこれから考えていく段階ですが、例えば、お客さまの周年記念式典や新製品プロモーションに体感イベントを提案するとか、ワクワクしながら考えています。IoTやAIの流れには色々な可能性を感じます。今までも自分が好きなことをやっていたらそれが仕事に繋がってきたので、これからも、自分の根底にある、「おもしろいことをやりたい、今までなかったものを作り出して人を驚かせたい」という思いを突き詰めて、社会の役に立って行きたいですね。
これから社会に出る若い方々にメッセージを送るとしたら、「好きなことをやるのが一番身に付くから、それをやってみるのがいいよ」と言いたいです。そして、それをさせてくれる雰囲気が、JBAにはあるよと伝えたいですね。