Project story 03

マーケティング 医療機器

見えない価値を、見える成果へ。
マーケティングで
医療の現場を変える

山本 篤 yamamoto atsushi

お客様情報

医療機器メーカーC社は、従業員数7,000名、血液検査機器でグローバルシェア45%を誇る企業だ。同社は医療現場の負担軽減を目指し、検査データを一元管理するITシステムを開発したが、ITサービスの販売経験がなく、初年度の導入実績は目標60病院に対しわずか16台にとどまっていた。JBAは課題解決のため、開発担当者への詳細なヒアリング、医療従事者7名への現場の声の聞き取り、競合他社30社の分析を実施。その結果、「導入メリットを具体的にイメージできる」ことが重要だと突き止めた。この知見をもとに、導入実績のある病院の具体的な成果を可視化した動画を制作。さらに、顧客の購買行動を3段階に分解し、PRチラシやLPサイトの制作、営業担当者向けの実践的な研修プログラムまで、包括的な支援を行ったマーケティング支援事例を紹介する。

新たなサービスを 広める手助けがしたい

血液検査機器メーカーが生み出した新サービスのマーケティング支援

C社は、主力製品の一つである血液検査機器はグローバルシェア45%を誇り、他にも血液検査用の試薬なども扱っている医療機器メーカーである。そんなC社が新たに開発したのは、顧客の検査結果や予約リスト、引継ぎ事項など血液検査に関するあらゆるデータを一元で扱える管理システムであった。いわゆるこのようなITサービスの取り扱いは今までC社はしてこなかったが、「医療業界全体に対してさらなる価値を提供したい」という強い思いから、新たに医療現場の負担を軽減する管理システムを開発した。この管理システムを全国の病院へ導入するため、C社はマーケティング部を新たに結成。初年度の売上目標として「60病院への導入」が掲げられたが、集められたメンバーは営業やマーケティングの経験がない人たちばかりだったため、病院の医師や検査技師にどうアプローチすればいいのか手探り状態だった。結果、同社が既存の検査機器事業で年間2,000台以上の販売実績を持ち、国内約1,900の医療機関と取引関係があるにも関わらず、初年度の導入は16台にとどまった。

このような背景から、営業推進部からJBAに、マーケティングに関する相談が入った。JBAは以前、C社の社内広報プロジェクトを手がけたことがあり、そのつながりで広報担当者が紹介してくれたのだ。元々付き合いのあった山本に担当者は、製品の魅力を伝える難しさを語った。「医療機器の場合は、精度や信頼性という具体的な数値や、製品の技術的優位性を示せば評価していただけました。しかし、ITサービスは目に見えない価値を伝えなければならない。」今までこのようなITサービスは経験がなく、どうやって魅力を伝えて良いのかが分からない、とのことだった。担当者から言われたのは「製品の魅力を伝える動画を作ってほしい」という依頼だった。山本はまず、この製品の訴求すべき魅力を深く理解するために、開発担当者に話を聞かせてほしい、と担当者に打診。1時間程度の取材を行なった。

伝えるべき魅力を徹底的に分解する

製品開発の経緯や、顧客の声から本当に伝えるべき魅力を抽出。

「臨床検査の現場では深刻な人手不足が続いています。当社は検査機器メーカーとして、数多くの医療機関を訪問してきましたが、どの施設でも『人が足りない』『業務が追い付かない』という切実な声を耳にしてきました」と開発担当者は語った。「人手不足や業務量増加の大きな原因の一つは、紙媒体への依存です。血液検査業界では、予約管理や検査結果の共有など、顧客に関するデータを紙媒体で保存するのが慣例でした」血液検査では試薬の情報など、膨大な情報を取り扱う。これらをすべて紙媒体で扱うため業務が煩雑化し、結果として業務量が増大しているのが現場の実態だった。DX化は急務とされているものの、現場の抵抗が強く、なかなか抜け出せない状況が続いているという。開発担当者は続けた。「確かに、当社にはIT開発のノウハウはありませんでした。しかし、20年以上にわたって臨床検査の現場と向き合い、業務の課題や改善ポイントを熟知している強みがあります。この知見があれば、現場が本当に必要としているIT化を実現できる。そう確信したのです」

この話を聞き、山本は管理システムが解決しようとしている課題と、背景にある想いを理解した。このヒアリングを通じて訴求すべきポイントが明確になった一方で、実際の顧客の声を聴く必要性も感じていた。その懸念を担当者に伝えると、「来週、医療従事者が集まるイベントがあるから、そこに同席してみてはどうか」との提案を受けた。そのイベントは、各医療メーカーが新商品を発表する場だった。山本はイベントの前後に医療関係者と話す機会を得て、合計7名の医療従事者にヒアリングを行った。共通して聞かれたのは、「このサービスが本当に成果につながるのか、確信が持てない」という声だった。ある病院長は「DX化を進めるべきだとは理解している。しかし、どれぐらい経費や人件費を削減できるのか、本当に導入にかかるコストに見合うメリットが本当にあるのか、前例がなく判断が難しい」と語った。

最後に、山本は競合の魅力の訴求方法について調査を実施した。医療業界のみならず、他業界の顧客管理システムなど、似たようなシステムを展開している企業が、どのような魅力の訴求方法を採用しているのかリサーチした。30社ほどの訴求方法を分析した結果、「導入のメリットを具体的にイメージできるように」という点に、各社が注力していることが明らかになった。「導入のメリットをどこまでリアルに想像してもらえるかが、今回のカギになる」。この考えに基づき、山本は具体的な動画の構成案を提示した。導入のメリットを視覚的に想像しやすくするため、実際にITサービスを導入した病院での業務効率化の成果を紹介するシーンを盛り込むことにした。例えば、ある病院ではIT化によって検査結果の確認時間が大幅に短縮された事例を具体的な数値で示し、導入前後の業務フローをビジュアル化することで、視聴者が容易に理解できる動画構成とした。

サービスを広めるため、
より本質的な施策を

依頼を受けていない領域まで自主提案

プロジェクトの終盤を迎え、依頼された動画は完成に近づいていた。しかし、山本の心は晴れなかった。動画はあくまで一接点に過ぎず、接点全体で魅力を押し出すことが必要だと痛感していたからだ。そのモヤモヤを抱えたまま、山本は思い切って社内の経営会議で意見を述べた。課題感を率直に伝えると、社長は即座に答えた。「別に求められているかどうかは関係ない。全部提案したらいい」その言葉に大きく背中を押された山本は、動画の納品後、改めて担当者に提案を行った。「動画だけではなく、マーケティング施策全体も提案させてくれないか」。JBAの作成した動画に満足していた担当者からは「是非お願いしたい」と快諾を得ることができた。

山本は、顧客の購買行動を徹底的に分析し、意思決定プロセスを3つの段階に分解することで、より効果的なアプローチ方法を見出した。
まず「認識」段階。ここでは、顧客自身が院内の課題に気づいていない状態から、問題意識を醸成していく必要があった。そこで山本は、営業担当者向けのPR用チラシと、商材を訴求するLPサイトの制作を提案。特にLPサイトでは、実際の導入事例と具体的な費用対効果を詳細に紹介し、現場の生の声を効果的に盛り込むことで、導入メリットを具体的にイメージできる設計とした。
次の「検討」段階。この段階では、顧客は既に課題を認識しているものの、具体的な解決策を模索している状態だ。より詳細な情報提供が求められると考えた山本は、既存の納品動画に加え、顧客が抱える個別の課題に焦点を当てた2分程度の動画シリーズを企画。それぞれの課題に対する具体的なソリューションを分かりやすく提示することで、検討を後押しする狙いだ。
そして最後の「意思決定」段階。ここで山本が最も重視したのが、営業担当者の提案力強化だった。「どれだけマーケティング施策を強化しても、最後に顧客と接する営業担当者が価値提案できなければ意味がない」。その信念のもと、社内の研修専門チームと協力し、包括的な育成プログラムを構築。業界動向の理解から顧客の経営課題に基づいた提案手法、さらには実践的なロールプレイまでを含む、実践的なカリキュラムを設計した。
このように、顧客の状態に応じた最適なアプローチを段階的に設計することで、より効果的な営業活動の実現を目指したのである。

写真
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「本当に価値あるサービスを
世の中に届けたい」
成果が出るまで伴走し続ける
JBAの支援スタイル

現在、これらの施策を具体化するために取り組んでおり、社内研修プログラムの作成と実施を山本が中心となって進めている。彼は営業担当者がC社のサービスの魅力をしっかりと理解し、顧客に伝えるスキルを向上させるための研修を行っている。
C社のように社会への貢献を実現するために素晴らしい商品を扱っていても、その魅力を十分に伝えられずに困っている企業は世の中にたくさん存在する。JBAは、A社の「医療の発展や人々の健康に貢献する」という使命の実現に向けて、C社やその製品の魅力を本質的に伝えるための支援を通して、医療業界全体に向けた更なる価値提供に伴走するパートナーとして伴走を続けている。

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業界・テーマを問わず
一流企業500社と伴走する
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